大阪地方裁判所 昭和42年(タ)17号・昭41年(タ)195号 判決
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〔判決理由〕2 治療関係費
原告は被告の不法行為によつて感染させられた梅毒の治療のために要した治療費、通院に要した交通費を損害として請求するので判断する。
原告が被告から梅毒を感染させられたことは前示のとおりであるところ、被告が故意に原告に梅毒を感染させたことを認めるに足る証拠はない。
しかしながら、被告は前記の如く原告との婚姻前、水商売の女性等と肉体関係を結んでいたものであるところ、かかる女性と肉体関係がもたれた場合には、梅毒の感染のみられることの多いことは世上往々みられるところであり、かかる者が結婚した場合配偶者にこれを感染せしめ、その身体に傷害を与えるであろうことはみやすいところであるから、かかる者が結婚するに当つては漫然と婚姻生活に入るべきではなく、結婚に当つては、まず感染の有無等について診断を受け梅毒の感染していないことを確認し、あるいは感染している場合には治療に専念し、あるいは相手方に感染せしめないような方途を講ずべき注意義務があるものというべきところ、被告はかかる方途を講ずることなく、漫然と原告と婚姻し、肉体関係を続け、原告に梅毒を感染せしめたものであるから、原告の右感染は被告の過失に基くものというべく、被告は原告に対し右不法行為に基く損害を賠償すべき義務があるものというべきである。そして、<証拠>によると、原告は右治療のための通院にはバスを利用すれば足り特にタクシーを利用すべき必要が認められないから、右交通費についてはバス代相当額金二七、〇〇〇円の範囲についてのみ相当因果関係があるものというべく、その余は失当である。
そうすると、被告は原告に対し右治療費等として昭和四一年一〇月三日から同年一二月一九日までの分金二〇四、九五四円、同月二〇日から昭和四二年一二月一九日までの分金一、〇四二、〇二〇円を支払う義務があるものというべきである。
(大野千里 斎藤光世 竹江禎子)